コンピュータの計算に使われる対数には、常用対数のほかに自然対数というものがあります。常用対数は、底(てい)の数が2だったり10だったりの整数で設定されているのに対して自然対数は少し違うのが特徴です。
自然対数の底は、発見した数学者ネイピアの名前から別名:ネイピア数とも言われます。ネイピア数は一般的にeと表され、
limn→∞(1+1/n)ⁿ=e=2.718281...
となります。
プログラミングで使う分には、こういう数があるんだくらいの認識でいいと思うので、詳しい過程は省略しますが、結論としてこの式の計算結果が 2.71828182…に収束します。
この e =2.7182…自体はたいした意味はなのですが、eを使った指数関数 e^x がとても重要になります。この数は、最も基本的な微分方程式 dy/dx = y の解となるため、この関数を使って、様々な微分方程式の解が構成できるというわけです。数ⅢCをやっていないとイマイチよくわからないと思いますが、とにかく微分しても値が変わらないというのがミソなのです
ここからが本題ですが、このネイピア数はその性質から金融工学においても、連続複利などの金利計算とにも応用することが可能です。
もし100万円を年利率100%の複利で預金したときとすれば
1年に1回利息を元金に組み入れると、1年後の元利合計は 100×(1 + 1)=200万
次に半年に1回利息を元金に組み入れるとすると、1年後の元利合計は 1×(1 +1/2)²
(半年複利のために金利は1/2になります。)
同じように
1月に1回利息を元金に組み入れると、1年後の元利合計は 1×(1 +1/12)¹²
1日に1回利息を元金に組み入れると,1年後の元利合計は 1×(1 +1/365)³⁶⁵
そして、一般的に1年にn 回利息を元金に組み入れると、1年後の元利合計は
1×(1 +1/n)ⁿ と表されます。
この計算をみると、n の数値をドンドン大きくしていくと、元利合計の値は限りなく大きくなっていくように感じますが、実はそうではなく上限があります。なぜなら金利の値は逆にどんどん小さくなっていくからです。
というわけで結局、金利がある一定値に近づいていきます。それが自然対数の底 e = 2.71828..なのです。
つまり、100万円を金利100%で1年預金したとして、利息の付く回数をどんなに大きくしていっても1年後の元利合計は 2.71828 万円を超えることはあり得ないのです。
ネイピア数e=2.7182…は他にも経済学で、オイラーの定理や経済成長率の仮定の際にも使われており、理系の範囲なのですが経済・金融にも広く使われている考えなのでとても大切です。