・マイナス金利とは?
通常の場合、私たちが銀行に預金すると、今の金利だと微々たるものですが一応利子がつきます。つまり銀行にお金を預けているとお金は少しずつ増えていきます。
ですが、金利がマイナスになると預金している分の利子を、銀行へ払わなければならなくなります。これがマイナス金利です。
とは言っても、この「マイナス金利政策」は市中銀行(三井住友・三菱UFJなど)が日銀に持っている口座における金利の話であって、私たちがお金を預けている銀行口座の預金の利子がマイナスになるというわけではありません。
これがマイナス金利政策の簡単な仕組みで、次はマイナス金利によってどのような影響が出るのを見て行きます。
・マイナス金利政策の影響
市中銀行としては、日銀にお金を預けていると、金利がマイナスになれば利子が付くどころか利子を支払わなくてはなりません。すると日銀にお金を預けておくよりも、そのお金を企業へ貸し出して金利収入を得たり、他の資産運用に回したりしよう、という動きに理論上になるわけです。
つまり、市場にお金を出回らせて、企業の設備投資と賃上げを後押しして、景気を刺激しようということです。
日銀と金融機関との間でマイナス金利になったということは、私達と金融機関との間の金利にも多少影響してきます。すぐにマイナスということにはなりませんが、将来的にはマイナスになることもあるかもしれません。
また、住宅ローンや自動車ローンの金利もさらに低くなり、もちろん預金利子の金利も低くなる可能性があります。各企業にとっても大きな影響があります。当たり前ですがこの金利政策は良い影響を受ける業界とそうでない業界があります。
まず基本的に銀行は苦しくなります。金利が低くなり、金利収入が減少するのであれば当然のことです。実際マイナス金利政策導入の発表で銀行株は下落しました。
逆に良い影響を受けるのは、不動産業界です。住宅ローンの金利が下がるのであれば、住宅ローンの乗り換えなどで契約が増えます。それから、観光業界や航空業界にとっても良い環境になります。金利の引き下げというのは、円安に繋がるのです。
円を持っていても金利が全然つかないのだから、たくさん持っている人は他の通貨に両替したり、とにかく円で持っていても仕方がないので売りますね。そうすると、円安になるわけです。
また円安になれば、海外からの観光客が増えます。そのため、観光業界や旅行業界も、景気がよくなると言われています。
・マイナス金利導入の経緯
日本の銀行金利はバブル崩壊から傾いた経済を立て直すため、景気刺激策としてドンドン金利を下げていました。(預金金利が下がる→銀行にお金預けていても儲からないので企業もっと収益性の高い投資にお金が回そうとする)
ですが、下げても景気はあまり回復せず2004年にはとうとう金利はゼロになってしまいました。これがゼロ金利政策というやつです。
その一時的に景気は立ち直り、金利はゼロではなくなったのですが、2008年のリーマンショックが起きたため、再度ゼロ金利政策を導入されました。加えて金利はもういじれないからとマネーサプライを増やす、※量的緩和と※質的緩和も追加投入されました。この2つも結局のところ、市場に出回るお金の量を増やすことが目的です。
※量的緩和:日銀が金融機関から国債を買い取って、銀行が自由に使えるお金を増やして市場に出回らせようとする政策。
※質的緩和:日銀が金融機関から買い取る資産の対象を広げて、超長期国債やETFといった金融商品も買い入れようとする政策。
しかし、これらの金融緩和にも限界が来ていました。そこで黒田総裁が放ってきたのがマイナス金利です。金融政策というのは、金利を動かすことが基本ですが、日本はゼロ金利政策と取っていたため、金利はこれ以上動かしようがないと思われていました。
この金融緩和政策は、ゼロ金利政策などの伝統的金融政策から外れた非伝統的金融政策なかでもさらに革命的な取り組みであり、その成果に非常に大きな注目が集まっています。
・マイナス金利政策の危険性
このマイナス金利政策の問題として国債の金利もマイナスになってしまうことがあります。これの何がマズイかというと、現在日本の財政状態は赤字国債が大量に発行することでどうにか成り立っています。
この大量の赤字国債を誰が引き受けるのかというと、りそなとかSMBCやUFJみたいな誰もが知っている大手市中銀行なわけです。銀行からすれば、利息が大してつかない国債をわざわざ購入してあげているのも関わらず、今回のマイナス金利によって国債に利子を逆に払わなければいけなくなってしまうのです。すると、銀行からしたら旨みがなくなるどころか損するだけなので、国債なんて買わないという事になってしまいます。
実際三菱UFJはマイナス金利の導入で国債を購入する会員権のようなものであるプライマリーディーラーの資格を返上しています。これは国(日銀)と市中の銀行の関係にヒビが入っていることを意味しており、経済どころか国家財政の危険性が出てきています。