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【金融知識】 赤字国債の歴史と無制限発行のカラクリ (その3)

 

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91年から94年まで赤字国債の発行はゼロでしたが、平成6年度(1994)から赤字国債の発行が再開されます。まず平成7年(1995)1月に発生した阪神淡路大震災の復興費用の財源として8,106億円の赤字国債が震災特例国債として発行されました。震災特例国債はこの年度限りですし災害対策なので必要不可欠ですので仕方ありません。

 

問題は減税特例国債です。減税特例国債とは、所得税等の先行減税によって税収が不足したため、その不足分を補填するための赤字国債です。減税特例国債は平成6年度から8年度まで合計8兆644億円発行されました。

 

この間、特別減税として合計6.6兆円の減税がおこなわれました。またこれに加え、恒久的減税も実施され平成7年度(1995)だけで2.4兆円の減税が行われました。この間、6.6+2.4=9兆円の減税が実施され、その減税分の税収不足を補うものとして合計8兆円強の赤字国債が発行されました。

 

財政資金の調達は本来税収で確保すべきものであり、税収で不足する資金を仕方なく金融市場から追加的に調達するというスタンスのはずでした。ところが、この減税国債発行の論理は、まず減税によって租税収入を減少させ減少した部分を金融市場で調達するというもので、本来の国債発行の論理と完全に逆転しています。

 

減税国債が発行された時点の租税収入は,極端な税収不足に落ち込んではいませんでした。ではなぜ,減税のための赤字国債が発行されたのかというと、赤字国債の抑止装置が無くなり、安易な国債発行が可能になったからです。

 

これから始まった赤字国債の増発は平成10年度から新たな段階に入ります。平成10年度の国債発行額は、当初予算では15.5兆円でしたが、発行実績は34兆円に倍増し、そのうち赤字国債発行額は当初の7.5兆円から17兆円に急増し、国債依存度は20%から40%と
なり、ここから赤字国債の膨張による国債発行額の急増、そして,政府資金の約半分を国債に依存する異常な財政状態がスタートします。

 

平成10年度に赤字国債が増発された一つの要因は「財政構造改革法」が凍結されたことに起因します。この財政構造改革法というのは、橋本龍太郎内閣の下で財政構造改革の推進を目標としたもので、具体的には平成15年度(2003)までに国及び地方公共団体の財政赤字の対GDP 比を3%以下とすること、次に平成15年度までに特例公債依存から脱却し、公債依存度を引き下げることを設定し、加えて財政運営の当面の目標として一般歳出の額を抑制など、特別会計を含むすべての歳出分野を対象とした改革を推進するこという法案でした。

 

そして、この財政構造改革法が成立し、いざ実行しようとしたとき、バブル経済が崩壊による金融システム不安が経済に深刻な影響を与え、緊急避難的な措置が必要となりました。このため平成10年(1998)停止法案は国会で成立しました。この法案の内容は経済が回復軌道に入るまで一時的に財政構造改革法の施行を停止するというものでした。

 

橋本内閣を引き継いだ小渕内閣は自らを「経済再生内閣」と位置付け,財政構造改革から積極的財政政策路線へ方針転換を明確にしました。まず平成10年11月16日「緊急経済対策」を発表し恒久的減税6兆円貸し渋り対策として5.9兆円社会資本整備に8.1兆円等総額20兆円を上回る経済対策を作成しました。次に平成11年6月には「緊急雇用対策及び産業競争力強化対策」を公表し総事業費5400億円が補正予算に組み込まれました。

 

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 参照(http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je13/h05_hz010205.html

 

このように小渕内閣は財政再建よりも景気対策を最優先しましたが、この財源は如何にして調達されたのでしょうか?平成10年度の国債発行額は、下の表をみると当初予算の2倍の34兆円となっています。

 

これは赤字国債の増発によって財源が調達されたことを示していて、平成11年度においても国債発行額は37.5兆円となり、国債依存度は42.1%に達しました。小渕内閣を引き継ぐ森内閣も同じく積極財政路線を継承し、平成12年10月には「日本新生のための新発展政策」が策定され、約11兆円の公共事業に取り組むことが決定されました。

 

森内閣以降、赤字国債の膨張要因は大型景気対策から社会保障関係費の増大に変化していく。租税収入は減少を続けている一方で、少子高齢化の進展によって社会保障関係費が毎年1兆円強ずつ増加し続けたからです。

 

さらに平成21年(2009)の民主党政権交代によって子ども手当・農家個別保障・高等学校授業料の無償化・高速道路の無償化など財源の裏付け無きバラマキ行政によって、歳入不足は拡大し国債発行額が税収入を超えるに至ったのです。赤字国債の無制限発行がこのようなとんでもないバラマキ行政を可能にしたのです。

 

そして赤字国債に頼ったばら撒き政策はアベノミクスでも引き続き行われ、今日日本の財政状態は危険な段階に足を踏み入れつつあります。

 

ざっくりまとめ

Q:

赤字国債無制限発行の原因は?

 

A:

大平正芳が設けた赤字国債現金償還の原則の撤廃とバブル崩壊、それによる長期金利の低下によって無制限発行に対する危機感が失われたこと。

 

 

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